台湾労務:労基法に対して違憲の判決。女性の深夜労働について

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POINT労基法にある女性の深夜労働禁止という項目が違憲となりました。これにより女性にも深夜労働が解放されます。逆に女性も深夜労働を拒否できなくなるという可能性もあります。法の解釈については、まだ議論の余地があるので、特に妊婦さんへの対応など、注意する必要があります。

労働局の発表によると、 8月20日、司法院は労働基準法第49条第1項を違憲とする解釈第807号を出し、即日有効となりました。

労基法第49条
第 49 条 (女子労働者の深夜労働の禁止およびその例外)
(第1 項)使用者は、女子労働者を午後十時から翌朝の午前六時までの間において労働させてはならない。ただし、使用者が労働組合から同意を得て、事業単位に労働組合がない場合には労使会議の同意を得て、かつ以下各号の規定に該当する場合には、この限りでない
一、必要な安全衛生設備が提供されている。
二、公共の交通手段がない場合には交通手段を提供し、または女子宿舎の備えがある。
(第2 項)前項第一項にいう必要な安全衛生設備は、中央主務機関がその標準を定める。ただし、使用者と労働者との間で約定される安全衛生設備が、本法よりも優れている場合は、その約定に従う。
(第3 項)女子労働者が健康上またはその他正当な理由により、午後十時から翌朝の午前 六時までの間において労働に従事することができない場合には、使用者はその労働を強制してはならない。
(第4 項)天災、事変または突発事件により、使用者が女子労働者を午後十時から翌朝の午前六時までの間において労働させる必要がある場合には、第一項の規定は適用しない。
(第5 項)第一項の但書及び前項の規定は、妊娠または哺乳期間中の女子労働者に適用しない。

解釈第807号では、
労基法第49条第1項に定める女性の夜間労働の制限は、男女の平等を保障する憲法第7条に反すると結論づけられました。

労働局は、労働基準法第49条第1項が夜間に働く女性を特別に保護する規定であり、その内容や立法趣旨には歴史的な背景があると説明していますが、労働局は行政機関として、当然、司法院の解釈に拘束されることなります。
この解釈に基づき、労働分野における男女平等を促進するために、管轄する法律や政策の見直しを継続していくとのこと。

労働局の記事より一部翻訳

具体的な変更内容と今後の展望

上記の発表により
夜間に働くことを希望する女性従業員はすぐに働き始めることができ、会社は労働組合や労働会議の同意を求めたり、女性従業員のために交通機関や寮を用意したりする必要がなくなり、敷居が低くなりました。今後は夜間労働について、男女ともに同じ権利と義務を持つことになります。

一方、会社は、労働基準法、労働安全衛生法、男女共同参画法を遵守し、従業員の雇用契約を遵守することを条件に、女性従業員に夜間の勤務を求めることができます。ただし、女性従業員の場合、健康上の理由など正当な理由を証明できれば、夜間労働は強制できないので、この部分はやはり男女で違いがあります。

また、労基法49条5項は、女性労働者が妊娠中や授乳中に夜間労働をしてはならないと規定していますが、これは第1条に依存しているため。第1条は司法院によって違憲とされたので、第5条も無効となる可能性があります。そうなると、妊娠中や授乳中の女性で、今までは法律で保護されて夜間に労働をしなくてもよかった人たちが、今後は夜間に働かなければならなくなる可能性があるということになります。

女性従業員に夜間労働をしてもらいたいと考えている雇用主は、今までは「安全・衛生施設」を設置する義務がありましたが、今後はその義務はありません。
ちなみに日本では、夜間に働く労働者のために、性別に応じて異なる設備を用意することが会社側に義務付けられていますので、この点が台湾と日本で異なります。

解釈第807号の効果は表裏一体で、女性の夜間労働の権利は制限されなくなったが、夜間労働をしたくない場合は特定の理由を除いて保護されなくなったといえます。

労働局長は、労働法第49条第1項は、違憲と判断され失効するが、
しかし、残りの項目である「使用者は、女性労働者が健康上またはその他の正当な理由により、午後10時から午前6時までの間に働くことができない場合には、これを強制してはならない」と「妊娠中または授乳中の女性労働者」については、解釈第807号では触れられていないので、そのため、女性労働者が夜間に働くことは、まだ原則として夜間労働をさせたり強制させたりはできないとみなすといいます。女性を保護するという観点から、妊娠中または授乳中の女性労働者は、いまだに夜間に働くことが制限されているとみなすとのことです。

自由時報より一部翻訳

LinkBizよりコメント

今までは女性が夜10時以降の深夜労働をするためには双方の同意、且つ必要な安全設備を会社が用意する、深夜に公共の交通手段がない場合は、交通手段か宿舎を提供する。という会社が負担すべき条件がありました。そのせいで、会社としても女性が働きたくてもコストの問題で働かせられないという可能性がありました。それが今回なくなったということになります。

ちなみに日本では1999年に、同様の理由で女性の深夜労働禁止の制限は廃止されています。

女性も男性と同様に深夜労働できるようになりましたが、反面女性も深夜労働しないといけなくなったという事でもあります。
以前はやりたくても簡単にできなかったというデメリットがあり、今はやりたくなくても断りにくくなったというデメリットがあります。

法の解釈は時間がかかるので、特に妊娠中や授乳中の女性についてはの対応はまだ様子を見る必要があります。

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